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「点をわたる」対談企画 vol.3





前回まで音環生の対談企画について連載してきましたが、今回はメインビジュアルとPVを制作してくださった東京藝大大学院映像研究科アニメーション専攻の修士1年、鉄崎凌大さんとmisaさんに行ったインタビューの模様をお届けします。


開催テーマ《 点 / point 》を踏まえつつ音環生をどう表現するか、深く考えられたPVを制作してくださったお二人に、制作背景や個人の作品などについて伺います!

今年度のPVはこちら!

左からmisaさん、鉄崎さん、インタビュアー




——まず初めに、今回のメインビジュアルやPVにどのような思いを込めたか、ぜひ教えてください。


鉄崎:音環というところを一つのモチーフで表し切るのは難しいことだと思うのですが、今回は「波」というモチーフに託してみました。音楽に限らない音全般を表せるし、制作・研究活動の道のりのようにも見えると思って選びました。舞台は無限の可能性を込めて宇宙空間なんですが、ディズニーのスペースマウンテンみたいな場面がありますよね。展示にきて、多くの作品が広がってる感じはワクワクするような遊園地っぽさがあると思っていて、それを表現できたらと思いました。そして、ヒトがその空間を巡る中でたくさんの「点」を集めていき、ゲージがたまっていきます。


misa:ゲージがたまってきたところで登場するモンスターは、困難とかを表していますかね。



——音環生が研究活動や創作に取り組む中で現れてくる内なる敵って感じもしました。


鉄崎:そうですね。それもありますね。

あと、展示の空間って全然一方的じゃないと思っていて、来場者側も何かを展示から学ぶときに最初は怖くて立ち向かっていけなかったものに立ち向かっていく、みたいな気持ちがあると思うんですよね。

モンスターと対峙するシーンではそういう気持ちも表現しています。モンスターの色彩については、それまでに出ている「点」が均等な色を使っていたので、それぞれの色からちょっとずらした色をミックスして、敵だけども邪悪すぎないかわいいイメージにしました。



——最後の方に一線に並んで4つの色に光り、未完成の道を進んでいくところが個人的には好きです。


misa:そこは鉄崎さんが細かく指示をくれて時間かけてやったところです。


鉄崎:制作態度的には歴代のPVの中で僕らが一番デザイン的だったのではないかと勝手に思います。アートパスを知らない人にどう楽しんでもらうか、というPVの果たすべき役割も同時に考えていました。



——今回はお二人で共作するのは初めてとのことですが、このPVはどのように分担して作業を進めたんですか?


鉄崎:僕がパーツごとに絵を描いて、それをmisaが動かすという作り方でした。役割を決める時も、こっちだよねって感じで、当然のように分担できました。それぞれ得意なところを担当した感じです。


misa:仲のいいコラボの仕方ですよね(笑)。



——今回、アートパス執行部や音楽をつけてくれた創作の学生と話し合いをしながら制作を進めていただきましたが、制作する中で音環のイメージって変わりましたか?


鉄崎:1人ひとりの音環生がそれぞれ情熱を持って知的に探求しているし、研究も面白いし、しっかりした人が多いと思います。また、アニメーション専攻と音環がお互いにいい刺激を与え合っているなと思います。



——続いて、お二人について色々と伺いたいと思います。アニメーションをやろうと思ったきっかけはありますか?


鉄崎:大学の絵画の時間に、5mの紙に描く課題があって。僕はあえて、水性ペンでイラストっぽいものをバーっと書いて埋めてみようと思って。その時に人体の動きとかをいっぱいかいて、想像力を働かせて書いているうちに、今は紙の上だけどこれを繋げてやってけば、アニメーションになるなと思いました。iPadでやり始めたんですが、線が動くことが自分の中で感動というか。それをきっかけに、自分なりにはじめました。



——misaさんがアニメーションに興味を持ったきっかけはありますか?


misa:テレビアニメが好きで、アニメを作りたいなと思ったのが最初ですね。でも、なぜ今はテレビアニメっぽいものを作っていないかというと、大学に入って多く「名作」を見て感化されたことがあります。

特にノーマンマクラーレンの「カノン」というアニメーションが印象的でした。このアニメーションでは一つの人間の動きが時間をずらして繰り返されることで前の自分と後の自分がやりとりできたりするんですよね。これを見た時に世界に対する見方が変わったくらい衝撃を受けました。ストーリーがあってもなくても技法というものだけで伝わるものについて共感していて、自分もずっとそういうものを作ってきた、ということなんです。


鉄崎:映像の初期の人たちがやっていることは、視覚遊びというのか、映像とかアニメーションの原初的な魅力を突き詰めていると思いますね。



——アニメーション専攻のゼミはどういった内容なのでしょうか?


misa:朝10時くらいからゼミが始まります。2時間くらいなんですが、それぞれが持ち寄った作品を見せて、フィードバックをもらいます。アニメーション専攻、メディア専攻、そして外部の方、計5人の先生の前で発表する機会が月に1回あるかないかという感じですね。朝9時くらいから準備して、自分の作品の作品紹介などを書いて展示として設え、ゲストに遊んでもらうまで行うときもあります。


鉄崎:年に一度、アニメーション専攻の学生の作品が集う修了展があります。東京会場と横浜会場でその年の修士1年と修士2年の作品を劇場で上映する形で行います。



——私自身、修了展に行ったことがあるんですが、アニメーションのバリエーションがここまであるとは驚きでした。misaさんはアニメーション専攻の中でもゲームコースにいらっしゃいますが、ゲームコースの作品展もあるんですよね?


misa:そうです、ゲーム展を3月初めにやる予定です。アニメーション専攻の修了展は2/22〜24と3/8〜10に行う予定です。興味のある方はぜひお越しください!




——今、制作しているお二人の作品はどんなものでしょうか?


鉄崎:タイトルは「My life as a dog」です。個人の短編アニメーションなので、些細なことをあえて深掘りしてフィクションにしたり、ちょっと偏ったものを意識して作りました。主人公は犬で、僕自身がモデルです。



——このアニメーションの制作のきっかけはどのようなところですか。


鉄崎:最初にあるのは悩みですね。作品に嘘はつけないので、その時にモヤモヤしていることや深刻に悩んでいることを他の人と共有できるようにするために色々なメタファーを用いて手探りで作っていく感じです。



——misaさんからみて鉄崎さんの作品はどう見えますか?


misa:見る側の気持ちになって、スキルとかで飾ったりせずに、楽しめるものを作る人だなと。あまりにも感性の方に偏ってて結局見てる側にとっては面白くないものができたりするんですが鉄崎さんの作品はそうではないですね。あと、声優の方々の演技が素晴らしいので注目です。



——misaさんの作品はどのようなものか教えていただけますか。


misa:自分が見て面白いと思えるような作り方を探していて、VRという視聴環境にまず辿り着きました。学校の授業で体験させてもらって、それがすごいインパクトのあるもので、今までの映像体験を超えてきたので。

内容としては、悩みが多くて塞ぎ込みがちだった時期の、自分の恋心や執着を作品に出したいなと思って。ミニチュアで自分の部屋のセットを作って、その中で360°カメラを使って撮っていくというものです。

題名は、主人公がキヨっていうので「キヨの部屋」です。その人に自分のいろんな悪い癖とかを投影して作っていきましたね。



——ゲームコースと伺っていたのでイメージと少し違いました。


鉄崎:ゲームコースって、言い換えるとインタラクティブアニメーションコースっていって。


misa:自分の好きなものを好きな形でやるという感じですね。


鉄崎:misaがやっていることは、僕のやっていることのひとまわり先のことなんですよね。人々に伝わるように表現形式まで拘っているというところが。


misa:いえ、そんなことは(笑)鉄崎さんの作品は、一番シンプルな形で一番大事なことをやっているから、こんなに伝わっている。



——お互い謙遜しつつ褒め合ってて関係性が垣間見えますね(笑)


——最後に、あなたにとっての《 点 / point 》とは?


鉄崎:点っていうと点数が思い浮かびますよね。人生に点数をつけるとすると、減点することや加点することは簡単なんですが、わかりやすく点に繋がらない点って多くあるなと思っていて。普段作品を制作する中でも、最終的にうまいこと形につながらなかった努力もあると思っていて、でも、点につながらなくても、そういうところを大事にし続けたいなと思ってます。


misa:自分が一番大事にしてるのが人と人の繋がりです。初めて会う人と話を深めていく中で、その人に関する点が増えていって、点じゃなくて人になるみたいなことを忘れてはいけないなと思っています。仲良い友達になると、性別や年齢ではなく、「その人はその人だ」と言えるようになりますよね。点が点だけじゃなくなった時、人々が幸せになれるような気がしますね。



——そのような思いはPVを通して確実に伝わっていると思います。本日はありがとうございました。そしてお二人の作品を楽しみにしています!


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